中学校1年生に薦めたい本100冊vol.6 9月

「生きる」ってどんなこと?~命を考える小説8冊

命は大切だ。それは誰しも
知っていることなのですが、
子どもたちに実感として教えることは
難しいと思うのです。
現代は人の死に立ち会う機会が
極めて少なくなっています。
核家族化が進み、
祖父母の死に立ち会うことすら
難しいのです。
その一方で、TVからは
誰かが亡くなったニュースが
いつも溢れています。
ゲームをすれば
主人公は何度でも生き返ります。
命の重みを知ること自体が
困難になっていると思うのです。

そこで読書です。
命を考える、
生きることについて考える、
絶好の機会を
提供してくれると思うのです。
それですべてが解決するわけでは
決してありませんが、
考える機会を得ることは
大切だと思うのです。
中学生が命や生きることについて
考えるのに適した8冊を
セレクトしてみました。

その1
「電池が切れるまで」(すずらんの会編)

ここに入院してくる子どもたちは、
いわゆる重度の患者です。
いつ終わるとも知れない
長い入院生活です。
無事に退院できるのであれば
いいのですが、
そこで亡くなってしまう子どもたちも
少なからずいるのでしょう。
まだ幼い中、
過酷な運命を背負いながらも、
周囲への感謝や
いたわりの心を持ち続けながら
懸命に生きる子どもたちの声が、
本書には収録されています。

その2
「犬が来る病院」(大塚敦子)

小児癌を患って3度の入院の後に
天に召されたちいちゃん。
白血病と戦い続けて
力尽きた信ちゃん。
大腸潰瘍で大腸摘出手術を
経験しながら、病を克服した翔太くん。
体の自由がきかなくなりながらも
病に打ち勝った悦子さん。
この4人の健気な姿に、読んでいて
何度も涙がこぼれてきました。
生きていくための
勇気をもらえる一冊です。

その3
「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」
(井村和清)

世の中に闘病ものは数多くあります。
しかし、闘病者が未来を嘱望された
有能な医師であること、
自分と同様の死期が迫った
患者のケアを最優先させた姿勢、
亡くなる際、妻の胎内に
「まだ見ぬ子」がいたこと等々、
状況が際立っています。

その4
「ガンに生かされて」(飯島夏樹)

末期ガンを宣告されながらも、
恨み言を述べるのでもなく、
きわめて明るく、かつ飾ることなく、
だからこそ生々しい闘病の実態にふれ、
資料化をすることもできないまま、
ただただ圧倒されていました。
死を目の前にしているのに、
なぜこのように前向きに
生きていられるのだろうかと
思いながら。

その5
「無人島に生きる十六人」(須川邦彦)

何とも濃厚な漂流記です。
何せ実際に起きた漂流事件の
記録なのですから。
漂流記といえば
デフォーの「ロビンソン漂流記」が
古典的名作です。
児童向けについてはヴェルヌの
「十五少年漂流記」でしょうか。
この二作が大横綱と言えるでしょう。
でも、その二作に勝るとも劣らない、
いや、絶対に勝っていると思われる
傑作が日本に存在していたなんて。

その6
「青空のむこう」(シアラー)

トラックにはねられ、
気づいたときには「死者の国」に
立っていた少年ハリー。
150年前に死んだアーサーと
仲良くなり、彼の導きでハリーは
「下の世界」へと降りていく。
ひどい言葉を投げつけてしまった
姉エギーに詫びるために…。

その7
「雪のひとひら」(ギャリコ)

ある寒い日に生まれた
「雪のひとひら」。
地上に舞い降りたときから
彼女の長い旅が始まった。
伴侶となる
「雨のしずく」との出会い、
そして新たなる命の誕生。
流れていく「雪のひとひら」は、
最後の瞬間、
自らの生の意味を深く悟る…。

その8
「ある小さなスズメの記録」(キップス)

第二次大戦中のロンドン郊外で、
脚と翼に障碍を持つ
スズメの雛が拾われた。
深い愛情に包まれて
育ったスズメは、
俳優のように舞台で演技し、
歌手のように音楽をさえずる。
それはやがて戦時下の人々の
希望の灯となっていく…。

ときどき思います。
子どもに「命の重み」を考えろ、
という前に、私たち大人が
もっともっと考える姿勢を
示す必要があるのではないかと。
できれば子どもと一緒に
読んで欲しい8冊です。

(2020.6.30)

PexelsによるPixabayからの画像

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